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求めあう、心が感じあう。いっしょに育つ。    2007年夏

 暫定政府で政党を確保した毛沢東主義派や山間部の一般市民による首都流入によって、近年カトマンドゥは過去にないほどの人口増加になっています。車両が急激に増え、排気ガスは益々多量排出されて、盆地のカトマンドゥはホコリと排気ガスで白いモヤが立ちこめ、ちょっと街に出ているだけでも頭痛や咽痛になる日々です。
 インフレが止まらないネパールでは、以前よりもいっそう格差社会が著しく「安いモノ」「高いモノ」の差が激しくなっているわりには個人の収入が増えないという悪循環になっています。カトマンドゥでは3月までは毎日停電が6時間近くあり、交通ストライキも多く、そんな中での印刷・着色・組作業が行われていました。現在もインド国境タライ地方でマオイストの分権派が国政に反発を続けているために、インドからの物資が長期にわたってストップすることがあり、物資をインド・中国に頼っているネパールはしょっちゅうパニックになっています。絵具もポスターカレンダーの上下の薄い木もインドからの輸入品ですが、この頃は手元になかなか届かなくなってきています。そんな現場を見ると、実に心が痛くなります。「状況を受入れる」という大きな許容がなければ生きてはいけない。そんな状況に人々は慣れてしまったようでもありますが、よくそれに耐えているなあと痛感します。

 そのような中で、今春、ペインターのニルマラさんが、カレンダー工場に戻ってきました。
彼女は一番古くから着色で働いていましたが、昨年、あるトラブルに巻き込まれて辞めさせられてしまったのです。その時彼女は泣いて懇願しましたが、オーナーは断固許しませんでした。しかし、その後、新しいスタッフではまとめ役がおらず、何かと問題が勃発していました。そこで人当たりがよくて気の優しいニルマラさんは、オーナーからまた呼び戻されることになったのです。彼女の塗り方は本当にすばらしい。私は日本でのデザイン製作において何十色も使うのですが、ニルマラさんはなんとたったの12色程度。しかも絵具の質がさほど良くないのにそれを混ぜて私の指示した色にほぼ完ぺきに作り上げるのです。数枚だけならまだしも、それを数千枚という数をこなすのに毎度ちゃんと同じ色を作り上げる。私はそんなニルマラさんをとても尊敬していました。
 彼女の住んでいる家は、4畳半程度の小さな部屋にご主人と20代の娘さん二人の4人暮らし。しかし家賃はご主人の給料の4分の一にもなるので、どうしてもニルマラさんが働かなければ暮らしていけませんでした。そんなニルマラさんが戻ってきてくれたことに、私は心から嬉しく、共によろこびあいました。そこにはお互いが尊重しあい、ビジネスを超えた心があるような気がしました。
 今年のゆいガイアカレンダーは、ニルマラさんが指示して管理している着色メンバーの商品です。
どうぞ皆さま、今年もネパールの風を感じながら各ページをじっくりとごらんになってあたたかい毎日をお楽しみくださればと願います。それぞれが大切に求めあってきた作品たちです。
ゆいガイア 井林昌子
(NPO法人 ヒマラヤ・ロクタの森 代表)



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