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つたえたい、ぬくもり。   2012年オンシーズン

 毎年カレンダーのデザインには年間で8ヶ月をかける。そして今回サンプルが最終でOKが出せたのは、通常よりも相当遅れてその6カ月後だった。前に記述していたカレンダー業者のメーカー兄弟が、ワケあって兄貴だけの社長となった。サンプルが初回送られてきたときは、目が飛び出るほどのオドロキだった。これまであれほど完ぺきに近い原画製版だったのに・・・・なんと原画とかけ離れた印刷になっているではないか…。 
私はフエルトやハンドウオーマーなどの小物も時々脚注で輸入しているが、何かとトラブルが多く、カレンダーだけは優等生のはずだった。メーカーに文句を言うと、「製版スタッフが他の会社に引き抜きされたから、新人になったんだよ。」との理由。スタッフを一新したらしい。

 私は何度も何度もサンプルのやり直しを要求した。私の筆タッチの絵は、製版上、とても困難らしい。時には版に手を入れて原画通りに作り上げなくてはいけない。その「手入れ」が難しいようで、新人スタッフの腕ではなかなかうまく仕上がらなかった。重なるやり直し要求に疲れ果てたメーカーは、挙句の果てにこんなふうにつぶやいた。「マコ、来年からはタッチを変えてくれないかなあ。」

 なんということを…。耳を疑った私は、「これが私なのだ。これでダメならやめるしかない!」と反撃した。通常、日本だったら、こういった場合なんとか必死にお客さんの要望に応えるべく、メーカーは努力するだろう。しかしネパールはちがう。「そっちが変わってよ。」だ。できないはずはない。人材のスキルが原因であるだけだ。

 そもそも、私が14年前にこのゆいガイアを始めた理由は、ただ、ただ、絵が描きたかったからなのだった。『想い』を表現したかった。そして、いしずえを積み重ねながら、少しずつ新しい息を吹き込むようにゆいガイアを生かしていきたかった。タッチを変えるということは、自身ではなくなるということだ。創っている私が充足できなければ…もうゆいガイアの意味を持たない。

 恐縮な話しだけれど、日々感じながら365日デザインの思考をしている。絵を描くというのは、心の棘をこそげ落とす作業だと感じる。時には生々しく痛み、魂が削られていくようでもある。しかしランナーズハイのように、次第にそれがフシギと心地良くなってくるのだ。描くことは、私にとってはデトックスだ。そして、拙ない作だけれど、いつも『伝えたい思い』で白い紙に向かう。意思は曲げられない。

 そうして…なんとか今季も、まずまず納得のいくカレンダーが出来上がった。この先もずっと、ゆずれない。いつの日にか、手に取る方々の心にあたたかなぬくもりが伝わってくれたらと願いつつ…さて、今季もようやくサイトアップです。                         
                             ゆいガイア 井林まさこ
        



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