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日はまたのぼる。 2016オンシーズン 活動を始めた2003年のネパールは、すでに激しい反政府勢力との内戦状態だった。あのころ、どんなに国政が荒れていても、どんなに人々の心に大きな重りがぶら下がっていたとしても、毎年春になると、森の中には絢爛に咲き誇る真っ赤な国花ラリグラス(シャクナゲ)だけは、人々の心をやさしく和ませてくれていた。この美しい静寂な森の外では憎しみ合う凄まじい戦争があるようにはとても思えない、「国破れて山河あり」とは、本当にこのことだと実感した。 王政が崩壊した2006年まではネパールの山間部は非情に危険極まりない地帯だった。私たちはヒマラヤ山中の森の中で、網の目をくぐるように何度もきわどい行動を冒してきた。大使館職員からも「お勧めしない」とクギを刺されていたけれど、無鉄砲の私はそれこそ鉄砲を抱えた反政府勢力グループを自分から追いかけるように支援活動許可のための話し合いをけしかけていった。「山間部住民の尊厳を守りたい。彼らこそ、社会の表舞台に。」 その想いだけで。 今思えば、私自身こうして生きているのは、ただ運がよかったというだけなのだと思う。 貧困なリモートエリアの人々の「生きぬく力」を引き出したい、当時の私はただその一心だった。自営でカレンダーの仕事を始め、手に取ってくださった人々がこのカレンダーをよろこんでくださり、皆さんのあたたかく力強い言葉に私自身が逆に励まされ、生きる力を与えられたことへの感謝の気持ちによる、ほんの小さなお返しとして・・・。「カレンダーを作ってくれるネパールの人々も幸せでいてくれますように」。ある方がそうメッセージを送ってきたとき、私自身の心がこうして動いた。 ジェットコースターに乗ったような山あり谷ありの過酷な活動だったけれど、この13年間で、ネパール人の真の底力、どんなことがあっても負けない強さとやさしさを備えた彼らのすごさを何度も見させてもらえたことは、私にとって最大の宝だったと思う。私の方が力を与えられた。 本当に・・・心からありがとう。 昨年、甚大な被害をもたらしたネパール大地震。カトマンズから離れた被災地の多くの町村では回復は遅々としており、途上国の災害復興はやはり難境を極めているのだけれど、でもけっしてネパール人はあきらめていないし、これまでのたくさんの苦しみを乗り越えてきた勇気を盾に、踏ん張って前を向いて生きようとしている。泣きたいときには一緒に励ましあおう。うれしいときには一緒に笑おう。 ラリグラスはいつも、どんなことがあっても、春には美しく咲いてくれる。 そして、明日もかならず、日はまたのぼる。 ★カレンダーの収益金の一部は、ネパール地震で被害の大きかった地域のひとつ、カブレ郡コシデカ村の復興支援にあてさせていただいております。 ゆいガイア 井林昌子 |
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