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ネパールの美大生、初仕事は   2025オンシーズン

 ネパール・カトマンズにアートカレッジ(いわゆる美大)があり、そこの15人の学生が今年度からアルバイトでカレンダーの着色仕事をすることになった。
ネパールは、信じられないのだけど、これまで「時間給のアルバイト制」というものが存在しなかった。「働く」=「半日もしくは日給、もしくはカレンダーの場合は一枚いくらの出来高制」が法的に絶対的な労働環境だった。それが近年の物価高騰により、地方の親からの仕送りだけで生活することが困難になってきた学生の「とにかく収入が必要!」という強い要望に対して、国もようやく時間給のアルバイトを容認する法律に変えたのだという。
 なんたって一般会社員の平均月給が日本円で2万円ほどなのに、ガス代だけで月に5千円もかかるご時世なのだ。この家計の収支でいったいどうやって暮らしているのか計り知れない。もっとも、ネパールでは「お金」はアルところにはアルのだけど。
万博でネパール館が建設費用未払いで数か月も未完のままだった、そのホントの理由は? いったい、なんだったんでしょうね。くつがえらない正義はどこにあるのやら。

 そんな5月のある日、メーカーのお嫁さんのアイシャさんから、たくさんの学生が着色作業をしている写真が送られてきた。
「マコさん、どお?素晴らしいでしょ~、この光景!今、トレーニング中よ。アナタのデザインはムズカシイからね! これで今年のシッピングはバッチリだわ!」
ゆいガイアカレンダーには印刷部分と手塗り部分があって、これまでの27年間の手塗りのほとんどは、家庭の主婦層が自宅でできる仕事として担ってきた。子育てをしながら空いた時間を有効に活用できるとよろこばれ、とてもよく頑張ってくれた。パッと見ただけでは、この部分は印刷なのか?手塗りなのか?わからないほど、手塗りの技術は向上した。
でも近年は、女性も海外に出稼ぎに行く人が多く、子供を産んだあと、残っている他の家族に小さな我が子を養育してもらい、本人は東南アジアや中東へ家政婦としてや時には日本の工場等にも働きに出ていってしまう人がたくさんいるのが現状となっている。 
 母親が子供を置いて海外に出稼ぎに行くって…、いやはや、いろんな価値観があるのだろうけど、そこまでしないと生きていけないということなのか、もしくはネパールも学歴社会になりつつあって、将来は子供を大学に行かせたい思いが強いのだろうか。
 だけどフシギなのは、親子が幾年か離れて暮らしていたからといって感情が希薄になる、ということはほとんどなく、たいていの子供は「お母さん大好き」のまま成長しているのだ。おじいちゃん、おばあちゃんや、親せき、ご近所さんの博愛的育児がいかに尊く偉大な存在か。
ううん、ネパール人の底知れぬ仁心の深さよ。

 と、まあネパールはそんな働き手状況で、カレンダー工場も主婦層が減少し、とにかく着色の人手が足りない、という切羽詰まったところでこの法案が可決。さっそく、メーカーは美大生に期待をしたところだった。

「はたしてまじめにやるのかなー」と私は一抹の不安があった。
そして案の定7月には「学生が家に持ち帰ったまま持ってこない!」とアイシャさんがぼやいていたが、私としては想定内の問題が勃発した。ここでも切羽詰まらないとエンジンがかからないネパール人が多いわけで…。
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 さて、そんな状況でしたが、ネパールの美大生初仕事の2026年カレンダーは、なんとか例年のとおり入荷を果たしました。ただ、かくのごとく生産が遅れたために出荷は一度でまとまらず、これから複数回にわたって輸入するはこびとなったわけです。といいますか、これもまた「例年のとおり」でありまして、相も変わらず今年も在庫管理で悩む毎日となるのかな、と、そんな覚悟をしていたところに…。

ネパールは大規模な抗議活動が起こり、日常が一変して、怒り、恐怖、悲しみの一週間が発生しました。外出禁止令が発令したため、しばらく工場も閉鎖されていたのでした。
まずは亡くなられたネパールの方々のご冥福を謹んでお祈りするとともに、負傷された方々へ心よりお見舞い申し上げます。
70人の尊い命は、もうこの世にいない。

 私は20年前、ネパールの革命運動の際にちょうどネパールにいたのですが、その時の多数の人々の積もり積もったマグマのように吹き上がる感情…とは、今また違う、形を変えた深い陰影。発する思いは確かに理解できる、けれども筆舌に尽くせない不条理なアクションに、心が悶えるばかりでした。   ーー民主主義とは。
ネパール、そして世界中の平穏を心から祈る日々です。

 そのような状況ですが、皆さまには、ネパールの未来の文化を担うであろう美大生が着色した2026年ゆいガイアカレンダーを、ぜひご高覧いただけますよう今季もどうぞよろしくお願い申し上げます。

 最後にこの場を借りて、「ネパールの若者たちへ」。
未来のネパールは、あなた方の力にかかっている!
たとえ海外に出ていても、素晴らしい自国の文化を大切に、これからもネパール人としての誇りをもって生きてほしいです。
日本のお店でネパールカレンダーを見かけたら、ネパールの美しい山と森を思い出してくれたらうれしいな。

                              ゆいガイア 井林昌子



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