ココロときずなのカトマンドゥ

カトマンドゥ、リングロードの北方に、そのファクトリーはある。 作業の多くは近隣の村人が自宅に持ち帰って行うため、ここで製作する人は、ざっと10人程度だ。いつここを訪れても、誰もがネパール人独特のやわらかい物腰の笑顔と純粋なる畏敬を表すしぐさで出迎えてくれ、そんな彼らを見ていると、日本から持ち込んだ手厳しいクレームをつい心の奥にしまい込みたくなってしまいそうになる。作業場はいたって和気あいあいとして、年間何十万ドルもの各国からのオーダーを毎日こなしているようには決して見えないからフシギだ。 ある日、私がそのファクトリーを訪れたのは、カトマンドゥも雨期真っ盛りになった6月の頃。 たたきつけるようなドシャ降りが数時間続いた後のファクトリーの中にその雨が入り込んでしまって、明日出荷しなければならないという着色された大量のポストカードがほとんど水浸しになり、とても出荷できる状態ではなくなってしまっていたのだ。これはかなりの損害になるはずだ。せっかくきれいに一枚一枚丁寧に色づけされていたのに、見るも無残な状態を前にしてでも、それでも業者は苦笑いしながら「仕方ない、やり直しだ。雨期なんだからこういうこともあるさ。」と、驚くほどの前向きなキモチ、決して何かのせいにするのではなく、常に自然と向き合いながら共存している、その人間性に私たち日本人が学ぶところはとても多い。 彼らは、我々顧客に対して分け隔て無く本当にベストを尽す。ビジネスは信頼関係がいちばんだというが、利益追求よりもお互いがわかりあい、譲歩しあい、そしてココロが通じあわないと、いい商品は生まれない。 ひとつのモノを通して生まれる国境を超えた確かなきずな、言葉では言い表せないぬくもりが、私たちを強く支えてくれているようだ。





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