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 ネパールと日本の方々に…心から、ありがとうございます   2021オンシーズン

 コロナウイルスの問題は、2年目となってしまっているなかで…。

 実をいうと、昨年の輸入は、本当に大変だった。
コロナ感染が拡大し始めた昨年の3月、ネパールは早々と長いロックダウンに突入、取引メーカーの工場も閉鎖を余儀なくされた。海外からのオーダーは一気に減り、カレンダー工場で仕事にたずさわっていた100人の作業員は、カトマンズでは暮らしていけず半数が田舎に帰ってしまった。

私自身はオーダーをしたはいいものの、本当にこんな状況で生産ができるのだろうか?と、不安でしかたがなかった。
ところが、コロナでネパールも大打撃だったのにもかかわらず、残った人たちの懸命な努力によって生産だけは順調だとメーカーが何度も私に言い聞かせてくれた。「どうにかみんながんばってるよ、だから大丈夫だよ」と。カレンダーは、運よく自宅でもできる行程が多いからだ。しかも、ネパールじゅう失業者があふれ、この仕事の継続のために、多くの従業員の必死さがうかがえるようでもあった。
しかし世界中がパンデミックで海外からの受注ががっくり減ってしまって覇気のない気弱になったメーカーの声で説得されても、それが本当かどうか、真偽はわからなかった。
その上、日本がこんな状態で果たしてカレンダーは売れるのだろうか…。先行きが見えないのにオーダーしてしまって、こっちのほうだって大丈夫なのか…。
きっとメーカーは、いつ、私にごっそりキャンセルされるか、日々びくびくしていたのだろう。通常でも季節アイテムしか取り扱っていない私は、春から夏までほとんど無収入になる。社会のこの状況下、世間では食品とマスクと消毒液の購買に走る日が続く中で、こんな私が壁にかけるためのインテリアであるカレンダーをオーダーしてしまったことが空恐ろしくなってきていた。

止めるべきか、進むべきか…。

 わさわさとした気持ちで夏を迎えたのだけれど、しかし一大の懸念は他の事案に移った。通常は8月に入荷するはずが、コロナの影響でネパールからのフライトが全くなくなってしまい、9月になっても飛行機が飛ばない日が続いたからだ。
これには焦って恐怖がよぎった。生産してしまった2021年カレンダーは、よもや日本で日の目をあてることができないまま、ネパールで沈んでしまうのか…。ネパールの人々によって必死に丹精こめて丁寧に作り上げられたカレンダーたちが、やがてリサイクルされるためにカトマンズのどこかの手すき工場の大きな撹拌機の中で木っ端微塵となり、再びドロドロの紙料となって灰色のうねりの中にいる姿を思い起こしてばかりいた。出荷できずにネパールにとどまってしまった運命のカレンダーたちの行く末が、走馬灯のように脳裏をかけめぐる。まさか、まさか…。
私だって、一年かけてあの8種を描いてきたのだ。不安で眠れず、ハラハラドキドキで毎日メーカーと電話で慰め合った。
「おねがい、なんとかして。どうにか送って。おねがい、おねがい」。もはや泣き声しか出なかった。

 メーカーの民族はネワール族で、彼が同じ民族で「お友達」と呼んでいたのは当時唯一フライトが許されていたネパール航空の管理者だった。そんな方々「お友達」のコネで、9月半ばにようやく運航が決まった成田線チャーター便の貨物にどうにかこうにか滑り込ませることができたのは、まさに奇跡としか言いようがなかった。実に長く待ちわびた多くのネパールの輸出業者群がいるにもかかわらず、貴重なチャーターフライト第一号に私なんぞの一介の個人事業者の数百キロの貨物を積載してもらえたのは、どうしてもミラクルとしかいいようがない。ただ、そのために、ネワールのお友達同士でどのような忖度があったのかは、私にはまったく知らないのだけれど。

とにもかくにも、荷物が成田に無事に着いてゆいガイアの倉庫に運ばれ、ようやく開梱していよいよカレンダーたちの鮮やかな顔を見られた時には、もうこらえきれずに涙が…。

「ああ、助かった。とりあえずはまぼろしの2021年カレンダーにならずにすんだ…。」

あの時の安堵感といったら、どんな言葉にもかえられない。なんて愛おしいカレンダーたちだろう。今はその先のことはまったく考えずとも、とにかく本当に、よかった、よかった、助かった、その言葉に尽きたのだ。

ありがとう、ネパール! ありがとう、森の恵み! 
ありがとう、山々で手すきに関わってくれた人々、重い原紙を山越え谷越えバス道路まで一生懸命に運搬してくれたポーターさん、カトマンズの工場で寝泊まりしながら印刷に励んでくれた職人さん、日中外出すると逮捕されてしまうロックダウンのために深夜3時にこっそりペインターの家に色付け用手すき紙を運んでくれた使用人さん、自宅で毎日丁寧にがんばって着色してくれた女性たち、田舎には帰らずにコロナに気を付けながらも祝日に赤ハンコを押したり製本してくれた従業員さん、この奇跡を無事に運んでくれたネパール航空も!
そして、こんな状況ですべてに尽力してくれたメーカー家族へ。心から深く、感謝、感謝をするばかりです。
本当に、みなさん、どうもありがとうございました。

 日本国内では、多くの人々の生活が大変な状況にあっても、たくさんの方からネパールへの励ましの言葉をいただきました。あたたかい想いがこめられたメッセージは、しっかりと、ネパールへもお伝えしました。
人と人とのつながりは、とてもやさしく、この上ない幸せを与えられますね。私はほんの架け橋をしているだけですが、おかげさまで何ものにも代えられない、宝物のようにキラキラとかがやく人の心のやさしさを感じることができました。
そして今、この場をお借りして、これまでゆいガイアカレンダーを手に取ってくださった皆さまに、心より深く、厚く、お礼を申し上げます。どうもありがとうございました。これは、ネパールの人々からのメッセージでもあります。

 また今回も引き続いて大変だったけれど、今年もみんながんばってなんとか出来上がりました。
私たちは、いつも、ここに、います。  

                          ゆいガイア 井林昌子



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